設計者の方々にも手軽にお使い頂けるAutodeskのシミュレーション製品に、信頼性と実績を備えた、の"Nastran"が新たにオートデスクの製品ラインアップに加わりました。そのNastranの魅力を皆様にお伝えすべく、これから5回にわたり記事を連載したいと思います。
第1回目のテーマは、「今さらなぜ設計者に解析を勧めるのか」です。
以前から、多くのCADベンダーが「設計者にも解析を!」と推進していますが、なかなか大きな広がりを見せません。そこには、「解析を覚えるのに時間がかかる!」や「信頼性に不安が残る!」など、幾つかのハードルがあります。
今回は「それでもやっぱり勧めたい!」その理由を6つに分けて紹介しますので、是非ご覧ください。
1. フロントローディング
機械や装置の設計者の方々は、要求された仕様に対して機能や性能、さらに低コストなど、限られた時間の中で実に様々な検討をされているかと思います。特に性能では、近似による技術計算や、出図後の試験などで問題点を洗い出し、場合によっては設計変更で対応する事もあります。これが、出荷後の実稼働で発見されたとなると、問題はさらに大きくなります。
出図後の設計変更は、対応できる範囲が限られてきますし、設計者への負担にもなります。再加工やレイアウトの変更が必要となると、納期がすぐに目の前にやってきますし、コストにも跳ね上がってきます。「当初予定していた予算を大幅に超えてしまった!」といったご意見もよく耳にします。ですから、やはりフロントローディング、早い段階で、有効な手段で問題点を抽出して、品質を作り込むことが重要ですね。
図1 フロントローディングの重要性
2. 70%から85%
この数字は何を意味しているかご存知でしょうか?
一般的に、出荷された製品で問題が発生した原因の、実に70%から85%は設計段階での検証不足と言われています。もちろん、製造上の問題で、例えば「溶接のスポットを変えてしまったために強度が不足した!」と言ったお話も聞きますが、やはり設計段階での検証は非常に重要であることが分かります。
3. 近似計算の限界
ある一定の形状であれば、電卓やExcelなどを使って一般的な技術計算式から強度を求めることができます。もちろん、独自の技術計算式を確立して、より高度な計算をしている方もいらっしゃると思います。それが、形状が複雑になって、複合部品になって、しかもボルトで締結されている状態になったら如何でしょうか。更に、強度だけでなく、熱や座屈や振動の影響まで見る必要があった場合は、お手上げに近い状態です。
図2 片持ち梁計算例
4. 社内に解析の部隊がいる!
この一言で、今回の記事は撃沈されてしまいそうですが、もう少しお付き合い下さい。
確かに、社内で解析ができる環境があれば“怖いものなし”ですが、その解析は身近な環境でしょうか。解析の専任者の方に解析を依頼する場合、要求性能や使用環境を細かく伝える必要があります。解析依頼書の作成に意外と時間をかけていないでしょうか。また、出てきた解析結果に対して、「本当はもっといろんな計算をして欲しかった!」と思われたことはないでしょうか。設計者の頭の中は、設計のアイデアで一杯です。これを、身近な環境で確認できるか、ある程度絞って依頼する環境では、大きな違いが生じるはずです。
5. だから設計者が解析を!
今までいろんなことを書いてきましたが、最後の一言としましては、“製品をよく知る設計者の方が身近な環境で解析を実施する”になります。この身近な環境が非常に重要です。
具体的に言うと;
・使い慣れた環境で解析ができる
専任性の高い解析をお使い頂く方法もありますが、使い慣れたCADとは別のソフト
を習得して活用するには時間がかかり、負担も大きくなります。逆にCADのインタ
フェースと同じ環境であれば負担も少なく、すぐに活用できるはずです。
図4 Inventor の解析(Nastran)による計算結果
・データの変換が必要無い
解析専用のソフトで計算するには、CADから解析ソフトへのデータの変換が必要になります。またCADで設計変更した場合は解析の設定を再度する必要があり、これも負担になります。そこで、CAD に統合された解析ソフトであれば、この問題が解決できます。
・熱、座屈、振動など、様々な検証ができる
オートデスクが開催した解析セミナーで設計者の方へ実施したアンケートから、強度計算の他に 熱や座屈、振動の影響を見たいといったご意見を多く頂きました。使い慣れた、データ変換の問題が無い環境で、これらの検証ができるのも重要です。
6. 信頼性がある!
いくら使い慣れた環境でも、計算結果に信頼性がなければ意味がありません。不安を残しながらの検証は、関係者への説明力にも影響してしまいます。そこで紹介したいのが、2014年8月にリリースした、Autodesk Nastran In-CADです。あのNastranがついに身近な環境で手軽に使えるようになりました。
以上で、私たちが「今さらなぜ設計者に解析を勧めるのか」の理由をご理解頂けましたでしょうか?
それでは、第2回目からNastranの魅力についてお伝えして行きます。
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