第2回目のテーマは「Inventorの中でNastranが動く驚きの事実」です。
オートデスクはこれまでに5億ドルを超える投資をして、シミュレーションのポートフォリオを充実化させてきました。
その中で昨年、世界的に名が知られており、実績も数多くあるNEi Nastranのテクノロジーをオートデスクのラインナップに迎え入れ、改めてAutodesk Nastranとしてご提供を開始しました。
1.そもそもNastran(ナストラン)ってなに?
前回の記事で設計者の方々にもNastranが手軽にお使いいただけることを書きましたが、「そもそもNastranってなに?」という方も少なくないのではないでしょうか?
今回まずはNastranの魅力を簡単にご紹介させていただきます。
Nastranは1960年代NASA(アメリカ航空宇宙局)が航空、宇宙のためのプロジェクトに対して構造解析を行うために開発した有限要素解析(FEM)プログラムです。
その後、NASAはNastranの更なる進歩を期待してソースコードを一般公開しました。それから40年以上がたち、2015年現在MSC、NX、そしてAutodesk Nastranの3つが主要なものとして残っており、現在も構造解析の世界的な業界標準として、航空、宇宙を始めとした様々な業界で活用されています。
構造解析の先駆けでもある老舗ブランドです。
ちなみにNastranという名前は「NASA Structural Analysis Program」に由来しています。
2.なぜ設計者が解析をした方がいいの?
さてこのように他の追随を許さない実績と歴史を持ち、構造解析の代名詞といってもさしつかえないAutodesk Nastranですが、なぜオートデスクは解析専任者向けではなく、日ごろ設計業務で忙しい設計者の方々向けにNastranをご提案しているのでしょう?
それは前回も少し触れましたがフロントローディングという言葉に集約されます。
CADで設計をしている段階で、製造現場で起こり得る不具合を事前に検出して対策をすれば、根拠ある妥当性を持った設計を後工程に渡せます。これにより、後工程での不具合発覚による手戻り、例えば図面の修正、試作のやり直しなど、さまざまな手間を削減することでコストや時間を無駄にすることがなくなります。まさに良いことづくめですね。
こういったことからオートデスクは「設計者こそ解析を!」と提案し続けているわけです。
3.Nastranは何ができるの? Inventorの解析と何が違うの?
実はInventor Professional には構造解析の機能が搭載されています。これにより線形静解析と固有値解析を行うことができます。しかし最近では、既に設計に解析を導入している設計者の解析に対するニーズが複雑化、多様化しています。
下図は弊社がユーザ様を対象に行ったアンケートの結果です。棒グラフの青は現在行っている解析であり、赤は将来やりたい、またはやる必要があると認識している解析の種類です。
この結果から設計者の50%弱はすでに静解析を行っており、また多くの設計者は今後より多くの解析を行って設計の妥当性を早期に評価したいと考えていることがわかります。
この設計者の要望を叶えるべくご提供を開始したのがNastran In-CADです。Nastran In-CADは線形静解析、固有値解析を始めとして、非線形領域(塑性領域)の解析や、熱、応答、座屈解析も行えるので、設計者を悩ませる様々な問題(熱問題や振動問題、金属疲労の問題など)にも的確な結果を素早く提供してくれます。
このNastran In-CADはAutodesk Inventorだけではなく、SolidWorksにもアドインして解析を行うことができますので、実はInventorユーザ様ではなくてもご利用いただけます。Nastran In-CADはネットワークライセンスでご利用いただけるので、例えば1ライセンスあれば、設計1課でAutodesk Inventorの中でNastran In-CADを使い、1課の方が使っていない時間は、設計2課の方がSolidWorksの中でNastran In-CADを使って解析を行うということができるのも非常に魅力的なポイントです。CADと同じように解析ソフトにも「方言」があるので、CADの種類に縛られることなく、万国共通の言語であるNastranの解析結果を使用して、国内外問わずデザイン レビューなどの情報シェアをスムーズに行うことができるというのは非常に大きなメリットとなります。
このようにオートデスクはNastran In-CADをより多くの設計者に使っていただき、きな効果を出していただけるよう、準備を整えています。
次回以降ではさらにNastran In-CADの優れた解析機能を深掘りし、設計時における一般的な問題に対してNastran In-CADをどのように活用できるのかをご紹介していきます。
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